宗教、文化、そしてコミュニティが万華鏡のように折り重なるシンガポールの建造物の成り立ちには、こうした多彩なものたちの影響が色濃く表れています。シンガポールの初期の入植者たちによって建てられた教会、モスク、シナゴーグ、お寺などが、無数の色と形で私たちの街の景観を賑やかにしてくれています。これらのアイコニックな宗教施設を訪ねて、シンガポールの歴史や文化に親しみながら、この土地固有のもの(ヴァナキュラー)や復活の様式のもの(リバイバリスト)、そして近代的なもの(コンテンポラリー)など様々な建築スタイルを楽しみましょう。

ゴールデンアワーの仏牙寺龍華院

ヴァナキュラー(土地固有のもの)

これらの寺院を訪れてシンガポールのルーツを探りましょう。こうしたお寺の建築様式は、インドまたは中国のヴァナキュラーから直接影響を受けています。


スリ・マリアマン寺院(ドラヴィダ建築様式)
シンガポール・チャイナタウンのスリ・マリアマン寺院のゴプラム 画像 Danny Santos

この象徴的な寺の正面を彩る6層の「ゴプラム」(寺院の入り口)はドラヴィダ建築様式で建造され、ヒンズー教の神々や伝説上の生き物、イギリス領インド帝国軍のインド人兵まで、様々な飾りが施されています。大礼拝堂の裏側には、様々な神々を奉った聖堂付きの小さな礼拝室があります。シンガポールにある最古のヒンズー教寺院、スリ・マリアマン寺院は草分けのヒンズー教徒コミュニティの中心であり、流行病を癒やす御利益で知られる女神マリアマンが奉られています。

スリ・マリアマン寺院 244 South Bridge Road, Singapore 058793
チャイナタウンMRT駅の近く


スリー・ラーマー寺院(ドラヴィダ建築様式)

建築様式こそスリ・マリアマン寺院(ドラヴィダ建築様式)に似ていますが、スリー・ラーマーにはこの寺独特の魅力があります。ラマ神など、ヒンズー教の神々の彫像に加えて、この寺院には、仏陀や「観音」(慈悲の女神)などの彫像が置かれており、シンガポールの多宗教の姿を反映しています。

スリー・ラーマー寺院 51 Changi Village Road, Singapore 509908
タナ・メラMRT駅の近く


ティアン・ホッケン寺院(中国系)
ティアン・ホッケン寺院の精巧な天井のクローズアップ 画像 Afur Wong

ティアン・ホッケン寺院(または「天国の寺院」)は、海の女神(天后聖女)である媽祖を祀るシンガポール最古の中国寺院です。初期中国系移民は、この寺院を訪れ、南シナ海航海の安全を祈願しました。この寺院のユニークな福建の建築様式は目を見張るものがあり、龍や神々といった驚くほどに精緻な彫刻、また、棟を飾る色とりどりの磁器破片が特徴的です。メモ:この傑作建造物には釘が1本も使われておらず、現在では国定記念碑に登録されています。

ティアン・ホッケン寺院(天福宮) 158 Telok Ayer Street, Singapore 068613
テロック・アヤーMRT駅の近く


仏牙寺龍華院博物館(中国系)
仏牙寺龍華院の連なる屋根の外観のクローズアップ 画像 Marklin Ang

2007年に完成したこの仏教寺院は魅力的な懐かしい佇まいが印象的です。この建造物は、唐時代の装飾で仕上げられた中国北部の寺院建築様式を忠実に再現したものであり、数多く反復した結果です。この寺院の大修道院長はこの建造物の作業に関して極めて厳密な要求を出しました。彼は、シンガポールにおける中国の伝統を示すために、昔そのままの技法を用いること、そして、チャイナタウンの街を尊重することに強くこだわったのです。

仏牙寺龍華院博物館 288 South Bridge Road, Singapore 058840
チャイナタウンMRT駅の近く


リバイバリスト(復活の様式)

シンガポールで顕著な建築様式であるリバイバル様式は、寺院などの宗教施設でよく見られ、そこを訪れる人々は文化と歴史の重みを感じることができます。


セント・アンドリュー大聖堂(ネオゴシック)
セント・アンドリュー大聖堂の建築物の夜景

シンガポールにある最古の英国国教会はアラブ出身の移住者より土地の提供を受けて建造され、13世紀の英国の教会を参考にしたと言われています。英国国教会との関係性を示すこの教会の主要な要素としては、カンタベリーの石材、コンベントリーの十字架、戴冠式の絨毯の3つが挙げられます。

セント・アンドリュー大聖堂 11 St Andrew's Road, Singapore 178959
シティホールMRT駅の近く


ヘセッド・エル・シナゴーグ(ルネッサンス・リバイバル)

パラディオ風のデザインで、シンガポールにある2つのシナゴーグのうちの新しい方として知られるヘセッド・エル・シナゴーグは古代ギリシャ時代とローマ時代の建築様式のリバイバルでルネッサンス時代の特徴が見られます。この様式はアーチ、コリント式の柱などが特徴的で、屋根付きポーチ(玄関)が配されています。このポーチは元々馬車で通るように造られていました。地元のユダヤ人コミュニティの中で最も高名なメンバーの一人は故デイビッド・マーシャル氏で、シンガポール独立の立て役者でもありました。

ヘセッド・エル・シナゴーグ 2 Oxley Rise, Singapore 238693
ドビー・ゴートおよびサマセットMRT駅の近く


サルタンモスク(インド・サラセン様式リバイバル)
サルタンモスクの構造 画像 Gaia Ong

現在の建物「マスジッド・サルタン」は1932年に完成したもので、インド・サラセン様式の特徴が顕著に見られます。これは伝統的なペルシャ様式、ムーア様式、トルコ様式を組み合わせた英領インドのスタイルと言えます。近づいて見ると、ドームの下部の装飾にガラス瓶が使用されていることがお分かりになるはずです。このデザインはイスラム教の住民全員がこのモスクの建築に貢献できるように採り入れられたものでした。

サルタンモスク 3 Muscat Street, Singapore 198833
ブギスMRT駅の近く


コンテンポラリー(近代的なもの)

シンガポールで古めかしい宗教が現代の街並みにしっくりと馴染む様子をご覧ください。これらの歴史的な寺院や教会は、その印象的な現代的建築様式で多くの称賛や賞を受けています。


アシアファーモスク(コンテンポラリー)

この2004年に完成したモスクはモスクのように見えませんが、意図的にこのようなデザインになりました。当モスクの説明によれば、Forum Architects社は見てすぐにモスクと分かるようなドーム、アーチ、ミナレットなどの特徴を意図的に排除し、中東のモデルをベースにした他のモスクとは異なるシンガポールの現代的なアイデンティティを模索しました。この過程で、「平静」、「精神性」、「調和の感覚」などに重点を置き、主要な照明として自然光を採り入れています。この建物は2008年にシカゴ・アテナイオン博物館主催の国際建築賞に輝きました。

アシアファーモスク 1 Admiralty Lane, Singapore 757620
センバワンMRT駅の近く

 


ブレストサクラメント教会(ポストモダン)

Van Sitteren and Partners社によって1965年に建造されたカトリック教会は、その真っ青なスレートの屋根で地元の人々に親しまれています。折り紙で作ったテントを思わせる外観は、旧約聖書の「会見の幕屋」をイメージしたものです。他の注目すべき建築物は教会内部です。主聖堂は十字架の形をしており、ホールが屋根に接する4カ所にはガラスがはめ込まれています。この技法により室内にたっぷりと自然光が差し込みます。

ブレストサクラメント教会 1 Commonwealth Drive, Singapore 149603
コモンウェルスとクイーンズタウンのMRT駅の近く